2021年4月9日 設立総会 名誉会員によるスピーチ

「ロボット社会に向けた大いなる挑戦」

パオロ・ダリオ教授 イタリア聖アンナ大学院大学、バイオロボティクス研究所所長

ダリオ教授 スピーチ資料

【スピーチの概要】

1.ロボットの大きな3つの潮流

産業用ロボット⇒サービスロボット⇒様々なロボット群

2.破壊的なイノベーションの予測は極めて困難

半導体技術進歩の経験則であるムーアの法則など、漸進的なイノベーションの予測は比較的簡単であるが、破壊的なイノベーションの予測は極めて困難である。映画「ブレードランナー」は、非常に興味深い人工知能の世界を提示した。しかし、自動車は空を飛んでいるが、電話ボックスが都市景観の中に残っていた。

3.動物や人間を科学すると破壊的なイノベーションのヒントになる。

鶏は、身体を揺すっても、頭は全く動じない。ある現象に対する予測や予想も、まだ未開発である。

4.映画「アイ・ロボット」シカゴ2035年から破壊的イノベーションを予測

①自由度(関節)

ロボットの関節の開発は、当初2つから始まり、一段ずつ増えて行った。これに対して、新しいロボットハンドとして、物体の形状に応じて形を変形させて掴むものが研究されている。

②モーブメント(手足部分)

手足の義足の技術開発が進み、パラリンピックでは健常者と変わりない記録を出す選手も現れ始めた。今後、ロボットの手足で、破壊的なイノベーションが起こる可能性がある。

③重量負荷

ロボットが持ち上げられる物体の自重に対する重量負荷は未だ0.2くらいであるが、人間の重量挙げの世界記録は1.4である。ワークロイドが、人の役に立つロボットになるためには、人間並みに重量負荷に耐えられる必要がある。

④素材(柔軟性)

生物の世界を見ると素材の可能性は豊富である。体が柔らかいロボットの研究が進み、素材分野で破壊的イノベーションが生じる可能性がある。

⑤インテリジェンス(知性)

最初はチェスのプログラムから始まり、近年、人工知能の発達は著しい。知性の分野でも、時間はかかるかもしれないが、破壊的なイノベーションが生じる可能性がある。

⑤-1組み込み型インテリジェンス

インテリジェンスは、コンピュータで計算されるようなものだけではない。生物を観察すると、体の部位全体が動きをコントトールし、環境適応を無意識に行っているように見える。例えば、犬を例に挙げると、通常のロボットでは、転倒しないようにセンサーとコンピュータのアルゴリズムを計算して動く。しかし、動物の犬は、複雑な路面でも気にすることなく非常にスムーズに歩く。身体自身で情報処理し、無駄な動きをせず、合目的な行動を無意識に行っているように見える。

⑤-2分散型インテリジェンス

タコを例に挙げると、タコのニューロンは、脳には全体の10%しかなく、25%が光を処理する触手にあり、残り65%が足に存在する。ニューロンによる計算結果が行動や状態の変化になるので、身体全体で情報を計算し、環境適用して生きていると言える。

⑥コラボレーション(協調)

当初、ロボットによる事故が生じることがあったが、その後、介護ロボットなど人が同じ空間で協働できるようになってきた。今後は、ロボットの動きが人に危害を与えないように、そのような動きを回避する研究が進んでいくだろう。

⑦インタラクション(相互作用)

人とロボットの協働が相乗効果を発揮するとともに、ロボットが人の社会の中により浸透していく。

5.未来について

Wkroidは、社会の様々な活動の中で応用できるロボットなので、人類の経済活動を支えてくれるだろう。

 

YouTubeダリオ先生の講演動画、高西先生が通訳しています。