設立趣意書

日本は世界でも類を見ないスピードで少子高齢化が進展しており、これに伴う生産年齢人口の減少と人手不足により、人の代わりに労働を代替するロボットの必要性が近々の課題となっています。特に、単純作業、重労働、危険作業などは、作業者の高齢化によりロボットによる代替が待ち望まれています。また、日本では、地震、津波、大豪雨などの自然災害が頻繁に発生し、被災地での人命救助を行うロボットも必要とされています。しかし、実際に日本で製造されているロボットは、工場内で固定されて稼働する産業用ロボットや通信技術を中心としたコミュニケーションロボットが大部分であり、現場で臨機応変に力作業ができるロボットの提供まで至っていません。また、高額なロボット開発費用や導入コストの問題が、中小企業等へのロボットの普及の制約条件となっています。当会は、このような問題を解決するため、一つのロボットに機能が集約された高性能なロボッではなく、単機能のロボットが通信しながら群れて人の労働を代替する“ワークロイド”を提案します。開発効率を上げるため、コンポーネントを共通化し、ROSやGazeboなどのオープンプラットフォームを活用します。“ワークロイド”を通して、ロボットを必要とする多様な人々の多様な要望に適切な価格で提供する世界を実現したいと考えています。

ワークロイドは、空間を自律的又は遠隔操作で移動して、様々な場所で必要とされる労働を代替するサービス・ロボットです。そのため、ロボットの手足を動かすアクチュエーターの技術が必須となります。ロボットの3要素、コントローラー(頭脳)、センサー(感覚器)、アクチュエーター(筋肉)の内、コントローラーとセンサーは、技術が著しく発達し、小型化、軽量化、低価格化が大幅に進んでいますが、アクチュエーターについては更なる技術革新の余地があります。日本には、自動車業界の裾野産業として技術力のある中堅・中小企業が多くあり、それらの企業はワークロイドを現場で稼働させるために必要なアクチュエーター及びその他技術を開発する潜在的能力を有していると思われます。一方で、日本政府は、「2035年までに新車販売で電動車100%を実現する」という方針を示し、ガソリン自動車を前提とする裾野産業の転換が必須となっています。このような状況も踏まえ、本会では、技術力はあるが、産業構造の転換で有効な活路を見いだせない中小・中堅企業の中からワークロイド開発の提案ができるロボット・システム・インテグレータを省庁・地方自治体・アカデミアとの協力の下で育成できればと考えています。そして、ワークロイドのロボット・システム・インテグレータの元にロボット部品・素材メーカーを裾野産業として広げていく、そんな活動の一助なればと思っています。

開発されたワークロイドを実際に利用するには、ロボット・フレンドリーな環境を整備することや各種制度や法律の調整も必要になるでしょう。ロボット・ユーザーが適正な操作を行うためには、技術教育を図る必要もあるでしょう。ロボット導入するための公的助成が必要な場面もあるでしょう。ロボットを実際に利用するにあたっては、様々な調整すべき事項が生じる可能性があります。本会は、省庁・自治体と連携しながら、相互の活動が重複せず補完関係となるように、ワークロイドを社会実装するために必要な調整作業を中長期的に行って行きたいと考えています。

ワークロイドを必要とする全ての人々に、必要とするワークロイドを提供できる社会を実現することを目的とし、ひいてはロボット産業の裾野を広げ、日本が世界をリードするロボット大国となることを目標に本会を設立致します。

以上


一般社団法人ワークロイド・ユーザーズ協会 会長: 高西淳夫